「正義!」 「リチャード! やったな!」 「やりました」 「やったな!」 「ええ、やりましたとも」 俺たちは満面の笑みを浮かべ、ハイタッチをした。高校生の運動部のごとくさわやかな手の平の音が、パーンと部屋の中に響き渡る。そして粉が飛び散る。 ホットケーキの試行回数は、実に十四回を超えていた。 その十四回のうちわけを説明する気はない。名誉の問題である。いろいろあった。とりあえずいろいろあったことだけわかってもらえればいい。粉が散り、牛乳が飛び、砂糖が舞い、火災報知器が発動した。 そして十五回目。 見事に俺の上司、リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアン氏は、ホットケーキを焼き上げることに成功したのである。直径十五センチほどの、満月のようなまあるいケーキ。あまり膨らまなかったが、もちもちしておいしそうだ。 実の所リチャードが、苦手な料理に挑むのはこれが初めてではなかった。 だが最初から、俺の助力を