5月18日、集英社オレンジ文庫から、『あいのかたち マグナ・キヴィタス』が発売されました。辻村七子初のSF短編集です。アンドロイドやサイボーグたちがふつうに存在する未来の世界を舞台に、主にアンドロイドの修理を請け負う人たちの姿を描いています。
雄大な挿画は、くろのくろ先生です。
辻村の今年になって初めての本、ぴっかぴかの新刊です。
とはいうもののこの『マグナ・キヴィタス』というサブタイトルにあるように、この本の舞台になっているキヴィタスという海上都市は、2017年の作品『マグナ・キヴィタス 人形博士と機械少年』と同じ場所です。
あの時の主人公、エルことエルガー博士と、ちょっとなまいきな少年アンドロイド・ワンの姿を、久しぶりに書かせていただくことができました。
とても嬉しかったです。
『マグナ・キヴィタス』はシリーズというよりも、世界観を同じくした場所を描かせてもらうプラットフォームのような存在になっていて、この先また書かせてもらえるかどうか等は全くの未定です。現段階では「いつかご縁があったら……」としか言えません。
しかしそもそも、単発で終わってしまうはずだったこのお話に、まがりなりにも「続き」を書かせていただけたのは、長年にわたってお手紙で「待っています」と意思表示をしてくださった皆さまのおかげです。
ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
ご期待に添えたかどうかは祈るしかないことですが、あのすこし・ふしぎな世界をまた覗きたい! と思ってくださった方々に、今回の作品が届いていることを、心から祈っています。
そして新しく海上都市キヴィタスの世界に触れてくださった方へ。
ようこそ。ここはユートピアともディストピアともいいがたい、私たちが暮らしている世界と同じような場所ですが、テクノロジーの発達によって、人々の悩みや苦しみの種類が少しだけ私たちと違います。彼らの姿を、あいのかたちを、そっと見守ってくださったら、とても嬉しいです。