だからサンタはいないんだよと。 言えたら楽になったのだろうが。 それを言ってはいけないことくらい、小学生の俺にもわかっていた。 サンタはお父さんなんだよ、サンタは家族の人が演じているものなんだよと、帰りの会が終わった後で、わざわざ女の子に話しかけにいったお調子者の男子がいた。たぶんそいつには悪気はなくて、ただ自分が知ったばかりの「いいこと」をその子にも教えてあげたくて、あとは多分すこし、その子に自分を大人っぽく見せられたらいいとでも思っていたのだろうが、もくろみはあっけなく潰えたようだった。 女の子は泣き出してしまったのだ。 なんでそんなこと言うのと、泣きじゃくるその子に、だっていないんだよ、本当にいないんだよと、情報の信憑性を疑われた科学者のように、そいつは繰り返していた。そういう問題じゃないだろうと、子ども心に自分が思っていたのを覚えている。 ちなみに俺の家には、昔からサンタはいなかっ
2020年12月18日、集英社オレンジ文庫から 「忘れじのK 半吸血鬼(ダンピール)は闇を食む」 が発売されました。 スタイリッシュな挿画は、高嶋上総先生です。 現代のフィレンツェを舞台に、わけありの医学生ガブリエーレ(画像左の黒髪のお兄さん)と、さらにわけありの半吸血鬼の青年(日本人。画像右側の茶髪のお兄さん)が、出会って、一緒に小さな冒険を繰り広げます。 半吸血鬼の青年には隠し事があるのですが、ガブリエーレはどうしてもその秘密の答えを知らなければならない事情を抱えています。 ガブリエーレは答えにたどり着けるのか? 青年は何故隠し事を抱えているのか? 最後に二人はどうなるのか? また不器用な男二人の物語になりました。お好みに合えば幸いです。 2020年は大変な年でした。 宝石商の第二部が完結した後に、長期のおでかけ(取材)を計画していたのですが、サイン会も中止
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