クレオパトラの真珠 昨日は久しぶりに、テレビ局の夜勤バイトだった。宝石店『エトランジェ』での土日のアルバイトの邪魔にならない範囲で、まだ少しだけ続けている。夜勤室にある消音状態のテレビからは、バイト先の局のチャンネルしか流れない。俺が入った六時には、歴史系のクイズ番組が流れていた。 特に興味のあるジャンルではなかったのだけれど。 「あのさリチャード、真珠って本当に、酢に溶けるのか?」 「クレオパトラの逸話ですか」 「うお、さすが宝石商」 「一般常識です」 紀元前のエジプトの女王だったクレオパトラは、ローマの将軍アントニウスと『どっちが豪華な食べ物を準備できるか』バトルをしたという。アントニウスは正攻法で世界の珍味をずらりと並べて見せたが、女王は変則技を使った。耳飾りにしていた大粒の真珠を、カップに注いだ酢で溶かし、アントニウスの前で飲みほしたのだ。 あっけにとられるアントニウスに、