今までのあらすじ
「楽しんで!」
そんな魔法の言葉に励まされて、おちこんでいたけれど元気をとりもどした辻村!
これからもたくさんの困難にきっと襲われるけれど、大丈夫!
愛と勇気を胸に抱いて前をむいて歩いてゆきましょ!
しかしそんな中、新たなる困難の波が近づいてきて……!?
次回! 魔法少女まじかるジュエリー第四話
「脚本づくりはタフ!」 おたのしみに!
(漫画の裏側にあるアオリふうに頑張ってみたかったのですがうまくいかなかった…)
—
ルポ記事、四番目です。
今回は脚本づくりに関する部分のお話です。
小説がアニメになるという実感がようやくわいてきて
その現実にどういう風に向き合うかも
ある程度はらがきまった頃合いのお話です。
とはいえこれは、ものすごく長丁場のお話であることだけ
ご承知おきください。
(1~最終話まで全部一気につくって校了! という感じでは…… ないのです……)
脚本。
それは台詞、トがき、効果音の指示などで構成された
小説とは似て非なる文章です。
1話につき、脚本1本。
それがアニメの放送話の数必要になります。
アニメの大体の構成と
どのお話をやるかやらないかは、
最初の打ち合わせの時点で決まっていたので
あとはそこにあわせてお話をつくってゆくだけなのですが、
これがしんどい!
原作者の監修という言葉が、いろいろなアニメの中に出てきたりしますが
一体それはどういうことなんだろう…と以前から思っていたのですが
おおざっぱに言うと
・登場人物の口調の確認(たまに違ったりする)
・セリフや行動の齟齬の確認(たまにこういうことはしないだろうという行動が書かれていたりする)
・お話全体の概括(めちゃめちゃ最高orテーマがよくわからない…等)
・作中には詳細の記述がないキャラクターの身長体重誕生日病状などの詳細を作成→提出
と、こんな感じ!
もちろん全ての監修の人がこういう作業をするわけではないと思うので
「私がやらせていただいたのはほぼほぼこんな感じの作業でした」と
いうことでご承知おきください。
それが毎週あります。
場合によっては二話ずつ、三話ずつ、同時進行で
これでいいだろう、というものになるまで
ずっと続きます。
一度、作業量とはまた別の理由で
作業をやってもやってもどうしようもなくなってしまったことがあったのですが
それは監督が大ナタをふるってくださり、ちょっと時間はかかりましたが事なきを得ました。
あの時はもうみんな大変だったと思うので
何とか波を乗り切れてほっとしています……。
なんだか大変そうな作業だな、自分はアニメ化が決まった作家だけどこれ大丈夫なのかな……(※1名くらいはいるかもしれないと想定される読者さん)とお思いの方、
あのね
あのね
一番大変なのは私じゃないんだ……
毎週の脚本会議に出席している人みんな、大変だったはずだよ……
そして私の周辺で、私がわかる範囲での話ですが、
もっと大変だったのはオレンジ文庫にいる、私の編集担当さんだったと思います……。
何故ならこの、私の手元にわたってくる前の
監督や脚本さん、その他の方々と一緒に行われる「脚本づくりセッション」(毎週)に
毎回毎回毎回毎回出席して
そこであれこれ意見を言って調整してくれる役割なので
いわば波が私にあたる前の、巨大な防波堤のような役割になってくれるのです。
原作者のところに脚本が回ってくる前に
一応、見てくださる気心の知れた方がいて、
私は本当にラッキーだったなと思います。
ほんとうにありがとうございました。
多分この脚本づくりの道は
自分の作品がアニメになる方が大体みんな通る道で、
個々人、作品によって、あたる波の規模や力は全く異なるものだと思うのですが
原作者にとってはこれが、作業量や所要時間
監修に要求される返信のデッドライン(翌週~翌日朝あるいは即時など)からして
一番大変な作業なのではないかと思います。
絵がかけるわけじゃないから、他に大変な作業がないとも言います。
アニメをつくる人たちはみんなこんな大変なことをしているの…!? と
本当に心配になってしまうような作業量を
皆さん当たり前のようにこなしていらっしゃるので
本当に頭が下がる思いでした。
そんなこんなでアンリミテッド脚本ワークスに励んでいる中
アニメーション作成スタジオ 朱夏さんにお邪魔させていただくことになりました。
(すでにその時最初の何話かの脚本は完成していました)
うれしい!
うれしい!
アニメを実際に作っていらっしゃる方のいるところにゆける!
辻村は絵は全然かけませんが絵は好きです、とても好きです。
朱夏さんは閑静な場所にある、こぢんまりとしたスタジオで
とても穏やかな雰囲気の場所でした。
そして副社長!(わんこ)
かわいい!
柴の子犬さんで
あまりにもかわいいのでテレビで特集されたりと
大変将来有望なマスコットさんでいらっしゃいました。
ひたすらに絵を描く業務の最中
社員にボールなげをさせて、気分転換に遊んであげたり
骨を引っ張りあってスタッフさんと遊んであげたり
棚の中に入ってお昼寝して周辺を癒したりと
副社長の貫禄たっぷりの、素晴らしい勤務ぶりでした。
そして皆さん、とてもやることが多くて、お忙しそうで…。
忙しそうなのに、たくさんかまってくださって、
本当にその節はありがとうございました。
あちこち見学しているうちに
スタッフさんのおひとりが
「ちょっとこれ見てください」と見せてくださったのは
たくさんのえんぴつ画の絵がかかれた、
A4あるかどうかというサイズの紙束でした。
パラパラ漫画だ!
パラパラするとリチャードがふりかえったり、
正義の顔がどんどん小さくなったりします!
これがアニメだ!
アニメになるんだ…!
あの、みんなで頑張ってつくった脚本で決まった筋書き通りに
キャラクターたちが動いて
しゃべって、お芝居をするために
絵が生まれている…!
アニメーションに必要な絵の枚数は
一秒あたり二十四枚~三十数枚程度で
毎週放送されるアニメの、一本あたりの分数は
OP/ED、CMなどをいれないと
二十分程度だそうです。
単純計算で
20×60×32=38400
そしてアニメは毎週放送されるので、
38400×毎週……
手書きの絵が、38400枚、毎週……!
とんでもない数です。
とんでもない数の絵の大群がアニメを作っているんだと
肌感覚で実感した瞬間でした。
だって目の前にある絵は、一枚一枚えんぴつで描かれているんだから…!
トトロやナウシカのつくられた時代とは違って
今はコンピュータを作画に用いることが一般的になっていますが
それでも機会が勝手に描いてくれるわけではなく
おおもとは人間が作っているのに変わりはありません。
これは人間が描いたものだ。
しかも、多分、たぶんの話ですが、
辻村のような人がうっかり何枚も絵をかいて、誰も修正しないまま完成に持ち込んでしまおうものなら、「作画崩壊」とか、わりあい気軽に使われる言葉であれこれ言われる可能性もないでもない…!
小説家だって誤字脱字をするけれど、文章崩壊とまで言われることは恐らくない…!
怖いなと思う反面、
これだけ巨大なものを、チーム一丸となって作り上げてゆく作業には
団結とか、献身であるとか、
そういう言葉では語りつくせない
何か姿の見えない巨大な生き物の影のような
いい知れぬ存在を感じました。
こつこつ、こつこつ
みんなで積み上げ、つくってゆく類の何かです。
すごいものをつくっている現場に立たせていただき
光栄でした。
私も忙しさにかまけてろくな差し入れもできないままになってしまったので
御礼というのも奇妙な話ですが
副社長の好きなおもちゃなどお尋ねしながら
またお邪魔できたらいいなと、ひそかに祈っております。
次はお待たせいたしました、辻村がアフレコ見学に行ったときのお話をルポさせていただきます。声優さんが出てくるよ!
どうぞよろしくお願いいたします。