※おことわり※
以下のSSは、辻村七子の誕生日を自分で祝うための「面白いことがしたいな!」という気分に基づくSSです。続き物です。(1)からお読みください。またとてもふざけています。何を読んでも笑って流していただければ幸いです。また本作のパロディもとになっている何らかのゲーム作品と辻村とは、一切合切なんの関係もございません。ご承知おきください。
————————————–
りちゃぽんはその後、さいごの仮面をてにいれました。
それはガラスでできた、とうめいな仮面でした。あまりにとうめいなので、持っているのかいないのか、よくよく目をこらさなければわからないほどです。
せいぎくんはみけんにしわを寄せました。
「ガラスの仮面なんて、かぶったって意味がないんじゃないのか。顔がみえちゃうよ」
「ぽにゃぽー」
『そんなことはありません。これをかぶっているとき、わたしは全てを拒絶することができます』
拒絶。せいぎくんは今までつかったことのない言葉でしたが、意味はわかりました。
それはすべてに「こっちに来ないで」と言うのと同じことでした。
せいぎくんはもうわかっていました。
「りちゃぽん、今まで仮面を集めた時、同じ場所にいた金髪の人は、お前なんだろう」
「にゃぽー」
『おや、お気づきになられたのですか』とりちゃぽんは言いました。特に隠していなかったと言いたげな口調でしたが、せいぎくんはその奥で、りちゃぽんがつらい思いをしているのがわかりました。
でもこういうときどうすればいいのか、せいぎくんにはわかりませんでした。
もうすこし自分が大人なら、どうしたらいいのかわかるのかもしれないなと、せいぎくんは少しくやしい気持ちになりました。しかしせいぎくんは小学生です。おばあちゃんやお母さんのことを思い出しても、正しい行動が思いつきません。
そんな時。
「あれっ?」
「ぽに?」
「仮面の気配があるよ。わかる。もう一枚あるんじゃないのか」
「ぽにぽ、にゃぽにゃぽ」
『いいえ、これで最後です』とりちゃぽんは言いました。しかしそんなはずはありません。
せいぎくんにはわかるのでした。
「こっちに来てくれ。まだあるよ」
「ぽにっ!」
せいぎくんはりちゃぽんの手をとって、雲の中へとはいりました。なんだ自分も飛べるんだなとわかった時、せいぎくんは嬉しくなりました。りちゃぽんの手をとって、どこか違う場所へつれてゆけることが嬉しかったのでした。
たどりついた場所は、小さなお店の中でした。
そこにはラベンダーブルーのスーツを着た金髪の男の人と、なんだかそのあたりで売っていそうなトレーナーを着た男の人がいました。金髪の男の人は、どうやらりちゃぽんのようです。
「いいにおいがするなあ! あっ、あれ見てみろよ」
「ぽにお!」
なんだかそのあたりで売っていそうなトレーナー姿の男の人は、りちゃぽんにお皿を差し出していました。そこには黄色くてぷるぷるしたお菓子がのっています。せいぎくんにもわかりました。
「ぽおーにー!」
「プリンだな!」
大人のりちゃぽんは、プリンのお皿を手にすると目を輝かせました。口はにっこりしません。ただむにむにしているだけです。
しかし、とても、嬉しそうでした。
せいぎくんは笑って、足元にいつからか落ちていた仮面をひろい、りちゃぽんに差し出しました。
「ほら」
「…………」
「黄色と茶色のお面だから、プリンのお面だな!」
「………………ぽにお……」
『こんなものがあるなんて』とりちゃぽんは呟きました。まるでまだ知らない未来を見てしまったような、家のあかりにたどりついた迷子の子どものような、困惑したのとほっとしているのがまじりあった声で、せいぎくんは嬉しくなりました。
「何でかわからないけれど、おれにも仮面の気配がわかるようになってよかったよ。でも、もうないみたいだ。これでいいかな」
「……にお……」
『これは嬉しい時にかぶる、はずかしいのをごまかすための仮面です』とりちゃぽんはお面を持って呟きました。せいぎくんはほっとしました。黄色と茶色の仮面は、何だか今までで一番、りちゃぽんに似合っているような気がしました。
そしてせいぎくんは思い出しました。
「りちゃぽん! これで舞踏会に行けるんじゃないか」
「ぽにっ!」
『そうでした!』とりちゃぽんは頷きました。
そして正義訓を見上げ、問いかけました。
「『俺も一緒に舞踏会に来ないか』って……?」
「ぽにょ!」
「いいのか……?」
「ぽに! ぽにぽにっ!」
『是非お越しください、私の恩人』とりちゃぽんは言います。
せいぎくんは笑ってうなずきました。
「うん! じゃあ、一緒に行こう!」
つづく(次でおしまいです!)