いつかの6月28日

June 28,2020

「では心を込めて。ハァッピ、バァースデーイ」
「うわもうやめて」
「トゥー・ユーウ」
「その余韻もやめて」
「ハァッピー、バースデイ」
「マリリン・モンローの物まねもやめて」
「トゥー・ユー」
「好きじゃない」
「ハァッピバァ――……この渾身のファルセットちゃんと聴いて。バァ――!」
「無駄にうまい」
「アァ――!」
「どこまで伸ばすの」
「アァ――スデ――エィェィエ――」
「本当に無駄にうまいんだから」
「ェエ――イ、ディーア」
「あー、あー、あー! 聞こえない!」
「………………」
「あー!! あー!! わー!! ……終わった?」
「ジェ」
「あーっ! 聞こえない聞こえない! 何も聞こえなーい!」
「じゃあそこは省略して、ハアッピバースデーイ、トゥー・ユー。おめでとう。終わり」
「ありがとう。ひゅう、やっと終わった…………」
「苦行僧みたいな顔するなら歌わせなきゃいいのに」
「そこは褒めてくれなくちゃ。Bランクあたりの苦行僧としては、Aランクの拷問に耐えられる日を夢見てさ、日々苦行にいそしんでるんだから。はいはいケーキ! フー! 蝋燭の火も全部消したよ。終わり終わり。おつかれさまでしたー」
「今年も一年、おつかれさま」
「……本当だよ。いつまで続くと思う?」
「さあ」