「ローズ姫と黄金のめがね」のプルーフをいただきました。
早川書房さんの読者モニター応募に応募したところ、ありがたくもモニターに選んでいただけたおかげです。
「ローズ姫と黄金のめがね」については、
早川書房さんのnote
https://www.hayakawabooks.com/n/n2409bc018609
が詳しいので、「読書感想文」を読む前にざっと見ていただければと思います。
ざっくりいうとメガネをかけたプリンセスが主人公の、メガネをかけた女の子をencourageする内容の絵本です。
だと思っていました。
そういう認識で、編集部の方が一冊いっさつ手製本してくださったきれいな絵本を読んでいたら、最後にはボロボロ泣いていました。
物語は主人公のローズ姫が、両親である王さまとお妃さまから、誕生日の贈り物にメガネをもらうところから始まります。ローズ姫はメガネの贈り物にがっくり、何故なら「自分のまわりにはメガネをかけているプリンセスもプリンスもいないから」……。
うちひしがれるローズ姫は、『本物のプリンセス』になるための旅に出ます。「あんたにはどうせ無理よ」「本物のプリンセスじゃないんだから」と言い募る、もう一人の自分を引き連れて。
と、このあらすじで大体お察しの方もいると思うのですが、このお話はメガネをかけている女の子を力づける以上に『自分で自分にネガティブな魔法をかけてしまっている人』を励ましてくれる本になっています(十二国記という小説をご存知の方には、主人公陽子のもとにあらわれる青猿というキャラクターが想起されるかもしれません)。
「××な自分はダメだ……。他にそんな子はいない……」と落ち込むのも自分なら、
「××なんて無理だよ、どうせ私は××だし……」とネガティブスパイラルに陥るのも自分、
「どうして私は××なんだろう」と、考えてもどうにもならないことを考えてしまうのも自分。
そういう自分に痛いほど覚えがあります。
この絵本を読んでいる時、思い出したのは幼稚園のころのことでした。当時の私の人生の主題は「ごっこ遊び」につきました。明けても暮れても幼稚園でごっこ遊びです。しかし子どもの世界もシビアなもの、当時のごっこ遊びにおいて、人気の役は固定制だったのです……(プリキュアごっこだとするのなら、プリキュアの役はいつも固定の子で、活劇に必要になるモブの役を、その他の子が持ち回りでやっていると思ってください)。
私はモブでした。
家で私が「たまにはプリキュア(仮)の役がやりたいな」とぼやいたところ、母は「やればいいじゃない」と言ってくれました。そりゃあそうだと自分でも思います。でも当時の自分はそうは思えませんでした。
その時の自分の反論を今でも覚えています。
「そういうのは『えらい子』がやるんだよ! 私は『えらい子』じゃないから」。
母は大笑いしましたが、それ以上追求はしませんでした。
本を読むという体験は、どこか自分の中へ中へともぐってゆく作業に似ています。今回の読書で私がたどりついたのは、幼稚園の頃の自分のいるところでした。
あなたはあなたのままでいいんだよ。
『えらい子』なんていないんだから。
でもあなたには、そういう子がいるように見えるんだよね。
それは間違ってないよ。でもちょっと考えてみてほしいんだ。
あなたが『えらい子』だと思っている子を、誰かが本当に『えらい子だね』って、ほめたり、特別扱いしたりしているところを見たことがある?
私はないなあ。
忘れちゃっただけかもしれないけれど、先生はそんなことはしなかったと思う。
だからもしかしたら、それは、あなたが思い込んでいるだけなのかもしれない。こんなこと言って気を悪くしたらごめんね。本当にごめん。
でもあなたに自信をもってほしいんだ。
やりたいことをやってほしいんだ。
やりたいことをやっていいんだよ。
やりたいことをやろうよ。
その当時には誰も言ってくれなかったし、もちろん自分で自分に言い聞かせてあげることもできなかったことを、この絵本を読んでいる間、小さな自分に言い聞かせてあげているような気がしました。
ローズ姫の冒険の末には何が待ち受けているのか、それは絵本を読めばわかるはず。一緒に楽しんでください。
と言いたいのですが、なんとこの絵本……
発売予定日が、今年の10月!
お母さん、10月っていつさ? 2~3か月後よ!
本物の本を手に入れる日が待ち遠しいです。その時にはこの酷暑も楽になっているとよいのですが……。
この本を書いてくださった、ロウリー・ムーアさん(英語版の出版当時は11才だったそうです)には、
小さなころの私から
「嬉しいことを言ってくれて、ありがとう」
というメッセージをお伝えしたいです。
助けてくれてありがとう。
苦しかったことすら当時はわからなかったけれど、今になってみると、窮屈な環境に自分で自分を押し込めていた私を、助けてくれてありがとう、と。
実は私も作家なので、誰かのことを、あるいは誰かの中にいる小さなころの誰かに、そっと手をさしのべられるようなものが書けたらいいなと、心から思いました。
と、期せずして夏休みの読書感想文のようなものを書いてしまいましたが、すてきなローズ姫との出会いの一助になれれば幸いです。
引き続き自分の原稿と戦います。とても楽しく戦えているので、この仕事をしていてよかったなあと、常々思います。
やりたいことをやります。