※おことわり※
以下のSSは、辻村七子の誕生日を自分で祝うための「面白いことがしたいな!」という気分に基づくSS、その2です。(1)から続いています。内容はとてもふざけています。何を読んでもワハハと笑って流していただければ幸いです。また言うまでもありませんが、本作のもとになっている何らかのゲーム作品と辻村とは、一切合切なんの関係もございません。ご承知おきくださいませ。
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せいぎくんとりちゃぽんは、手をつないで雲の中をとんでゆきました。
きらきら輝く雲は、おかしなことにどこまで飛んでも切れ目なくつづいています。そして空の上だというのに、せいぎくんは少しも寒くありませんでした。
「りちゃぽん! どこまで行くんだ!」
「ぽにっ、ぽにーっ!」
『それほど遠くではありませんよ』とりちゃぽんは言いました。
そして言葉が終わるとすぐ、ふたりの視界はひらけました。
やってきたのは、まるで外国の時代劇の中にでてくるような、大きな石造りの学校でした。黒いローブのようなものをまとった、いろいろな国からやってきた生徒たちが、たのしそうにおしゃべりをしています。そしてふしぎなことに、スマホをいじっている子はひとりもいませんでした。
「りちゃぽん、ここは?」
「ぽに」
『一つ目の仮面のある場所です』とりちゃぽんは言いました。
そして空の上から、学校の庭の、ある一点をみつめていました。
そこでは金髪の男の子と、黒いちぢれ毛の男の子が話しをしていました。
ちぢれ毛の男の子は楽しそうでしたが、金髪の男の子はそうでもありませんでした。
「おまえ、冬休みはどこいくの?」
「いえ、特にどこへも」
「なんで? 家族が迎えにこないの?」
「……私の家族はそれぞれのことで忙しいので」
「へえー。変なの。つらくないの?」
「…………それほどでは? 楽しんでいるので」
「そっか! ならよかった!」
それじゃ、と言うと、男の子はさっと身をひるがえし、他の子たちとおしゃべりをしに行きました。
空の上で、りちゃぽんはきつく手をにぎりしめていました。
せいぎくんはりちゃぽんが心配になりました。
「りちゃぽん、どうしたんだ。大丈夫か」
「ぽに」
『大丈夫ですよ』と告げるりちゃぽんの声は、とてもやさしく、せいぎくんよりずっと年上の人のようでした。
そしてせいぎくんはびっくりしました。
りちゃぽんの手のなかに、うつくしい仮面がひとつ、あるではありませんか。
きらきらと輝くそれは、まるで清流の青い流れをすくってきて、そのまま時間をとめてしまったような、すきとおった青でした。
せいぎくんはその仮面を見たとき、ちくんと胸のおくがさびしくなりました。どこか悲しくなるような色だったからです。
「りちゃぽん、その仮面、どこで見つけたんだ?」
「ぽにおー」
『ここで見つけたのです』とりちゃぽんは言いました。
そして金髪の男の子を見つめていました。
男の子はまるで、ほんものの仮面をつけたような冷たい表情をして、すたすたとお庭から石づくりの建物の中へと入って行きました。『図書室に行くのでしょう』とりちゃぽんは言いましたが、せいぎくんにはなぜりちゃぽんがそんなことがわかるのか、わかりませんでした。
「ぽにっ! ぽにぽに! ぽぽー!」
『さて、ここで見つかる仮面は手に入れました。また別の場所へ参りましょう。おつきあいくださいますか?』と、りちゃぽんは微笑みながらせいぎくんをみました。
「ああ! もちろんだよ」
「ぽに」
『では』と告げ、りちゃぽんは再び、小さな手でせいぎくんの手をにぎりました。
二人はふたたび雲の中へ飛び込みました。
次はどんな仮面が待っているのだろう? もうちょっとあかるくて、りちゃぽんが楽しそうな顔をするところがいいのにな。せいぎくんはそんなことを考えていました。
つづく