2023辻村七子誕生日おたのしみSS(2)

September 24,2023

※おことわり※

以下のSSは、辻村七子の誕生日を自分で祝うための「面白いことがしたいな!」という気分に基づくSS、その2です。(1)から続いています。内容はとてもふざけています。何を読んでもワハハと笑って流していただければ幸いです。また言うまでもありませんが、本作のもとになっている何らかのゲーム作品と辻村とは、一切合切なんの関係もございません。ご承知おきくださいませ。

 

 

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せいぎくんとりちゃぽんは、手をつないで雲の中をとんでゆきました。

きらきら輝く雲は、おかしなことにどこまで飛んでも切れ目なくつづいています。そして空の上だというのに、せいぎくんは少しも寒くありませんでした。

「りちゃぽん! どこまで行くんだ!」

「ぽにっ、ぽにーっ!」

 

『それほど遠くではありませんよ』とりちゃぽんは言いました。

そして言葉が終わるとすぐ、ふたりの視界はひらけました。

やってきたのは、まるで外国の時代劇の中にでてくるような、大きな石造りの学校でした。黒いローブのようなものをまとった、いろいろな国からやってきた生徒たちが、たのしそうにおしゃべりをしています。そしてふしぎなことに、スマホをいじっている子はひとりもいませんでした。

 

「りちゃぽん、ここは?」

「ぽに」

 

『一つ目の仮面のある場所です』とりちゃぽんは言いました。

そして空の上から、学校の庭の、ある一点をみつめていました。

そこでは金髪の男の子と、黒いちぢれ毛の男の子が話しをしていました。

ちぢれ毛の男の子は楽しそうでしたが、金髪の男の子はそうでもありませんでした。

 

「おまえ、冬休みはどこいくの?」

「いえ、特にどこへも」

「なんで? 家族が迎えにこないの?」

「……私の家族はそれぞれのことで忙しいので」

「へえー。変なの。つらくないの?」

「…………それほどでは? 楽しんでいるので」

「そっか! ならよかった!」

 

それじゃ、と言うと、男の子はさっと身をひるがえし、他の子たちとおしゃべりをしに行きました。

空の上で、りちゃぽんはきつく手をにぎりしめていました。

せいぎくんはりちゃぽんが心配になりました。

「りちゃぽん、どうしたんだ。大丈夫か」

「ぽに」

 

『大丈夫ですよ』と告げるりちゃぽんの声は、とてもやさしく、せいぎくんよりずっと年上の人のようでした。

そしてせいぎくんはびっくりしました。

りちゃぽんの手のなかに、うつくしい仮面がひとつ、あるではありませんか。

きらきらと輝くそれは、まるで清流の青い流れをすくってきて、そのまま時間をとめてしまったような、すきとおった青でした。

せいぎくんはその仮面を見たとき、ちくんと胸のおくがさびしくなりました。どこか悲しくなるような色だったからです。

「りちゃぽん、その仮面、どこで見つけたんだ?」

「ぽにおー」

 

『ここで見つけたのです』とりちゃぽんは言いました。

そして金髪の男の子を見つめていました。

男の子はまるで、ほんものの仮面をつけたような冷たい表情をして、すたすたとお庭から石づくりの建物の中へと入って行きました。『図書室に行くのでしょう』とりちゃぽんは言いましたが、せいぎくんにはなぜりちゃぽんがそんなことがわかるのか、わかりませんでした。

 

「ぽにっ! ぽにぽに! ぽぽー!」

 

『さて、ここで見つかる仮面は手に入れました。また別の場所へ参りましょう。おつきあいくださいますか?』と、りちゃぽんは微笑みながらせいぎくんをみました。

「ああ! もちろんだよ」

「ぽに」

 

『では』と告げ、りちゃぽんは再び、小さな手でせいぎくんの手をにぎりました。

二人はふたたび雲の中へ飛び込みました。

次はどんな仮面が待っているのだろう? もうちょっとあかるくて、りちゃぽんが楽しそうな顔をするところがいいのにな。せいぎくんはそんなことを考えていました。

 

つづく