2026年ジェフ誕/ミニ小説

June 28,2026

憂いなき日   「正直に言うとドイツ語はそんなに得意じゃない」 「安心して。私の知ってるドイツ語は『ハーゲンダッツ』と、あとはレストランの名前だけだから」 「キム、申し訳ないけどハーゲンダッツはルーベン・マッタスの造語だよ」 「誰?」 ユダヤ系アメリカ人で戦後に商売を興して、とジェフリーが語り始めると、ヨアキムは何度か頷き言葉を打ち切らせた。大体わかった、という風である。 まるい外周を持つ噴水の縁を、白いハイヒールをはいたヨアキムが歩いている。噴水の下を歩くジェフリーは、ヨアキムの手に自分の手を添えていた。噴水池には周囲を照らすオレンジ色の電灯と、ささやかな星の光がうつりこむ。 夜。 ロココの庭は、広い宮殿の一角であった。 他に人はいない。 「前から気になってたんだけど、あなたはどうして自分の誕生日なのに、他人を労ったり、祝ったりしてくれるの?」 「自分の誕生日が大して嬉しく思え