2023辻村七子誕生日おたのしみSS(4)

September 24,2023

※おことわり※

 

以下のSSは、辻村七子の誕生日を自分で祝うための「面白いことがしたいな!」という気分に基づくSSです。続き物です。(1)からお読みください。またとてもふざけています。何を読んでも笑って流していただければ幸いです。また本作のパロディもとになっている何らかのゲーム作品と辻村とは、一切合切なんの関係もございません。ご承知おきください。

 

 

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りちゃぽんはその後、さいごの仮面をてにいれました。

それはガラスでできた、とうめいな仮面でした。あまりにとうめいなので、持っているのかいないのか、よくよく目をこらさなければわからないほどです。

せいぎくんはみけんにしわを寄せました。

「ガラスの仮面なんて、かぶったって意味がないんじゃないのか。顔がみえちゃうよ」

「ぽにゃぽー」

 

『そんなことはありません。これをかぶっているとき、わたしは全てを拒絶することができます』

 

拒絶。せいぎくんは今までつかったことのない言葉でしたが、意味はわかりました。

それはすべてに「こっちに来ないで」と言うのと同じことでした。

せいぎくんはもうわかっていました。

「りちゃぽん、今まで仮面を集めた時、同じ場所にいた金髪の人は、お前なんだろう」

「にゃぽー」

 

『おや、お気づきになられたのですか』とりちゃぽんは言いました。特に隠していなかったと言いたげな口調でしたが、せいぎくんはその奥で、りちゃぽんがつらい思いをしているのがわかりました。

でもこういうときどうすればいいのか、せいぎくんにはわかりませんでした。

もうすこし自分が大人なら、どうしたらいいのかわかるのかもしれないなと、せいぎくんは少しくやしい気持ちになりました。しかしせいぎくんは小学生です。おばあちゃんやお母さんのことを思い出しても、正しい行動が思いつきません。

そんな時。

「あれっ?」

「ぽに?」

「仮面の気配があるよ。わかる。もう一枚あるんじゃないのか」

「ぽにぽ、にゃぽにゃぽ」

 

『いいえ、これで最後です』とりちゃぽんは言いました。しかしそんなはずはありません。

せいぎくんにはわかるのでした。

「こっちに来てくれ。まだあるよ」

「ぽにっ!」

 

せいぎくんはりちゃぽんの手をとって、雲の中へとはいりました。なんだ自分も飛べるんだなとわかった時、せいぎくんは嬉しくなりました。りちゃぽんの手をとって、どこか違う場所へつれてゆけることが嬉しかったのでした。

たどりついた場所は、小さなお店の中でした。

そこにはラベンダーブルーのスーツを着た金髪の男の人と、なんだかそのあたりで売っていそうなトレーナーを着た男の人がいました。金髪の男の人は、どうやらりちゃぽんのようです。

「いいにおいがするなあ! あっ、あれ見てみろよ」

「ぽにお!」

 

なんだかそのあたりで売っていそうなトレーナー姿の男の人は、りちゃぽんにお皿を差し出していました。そこには黄色くてぷるぷるしたお菓子がのっています。せいぎくんにもわかりました。

「ぽおーにー!」

「プリンだな!」

 

大人のりちゃぽんは、プリンのお皿を手にすると目を輝かせました。口はにっこりしません。ただむにむにしているだけです。

しかし、とても、嬉しそうでした。

せいぎくんは笑って、足元にいつからか落ちていた仮面をひろい、りちゃぽんに差し出しました。

「ほら」

「…………」

「黄色と茶色のお面だから、プリンのお面だな!」

「………………ぽにお……」

 

『こんなものがあるなんて』とりちゃぽんは呟きました。まるでまだ知らない未来を見てしまったような、家のあかりにたどりついた迷子の子どものような、困惑したのとほっとしているのがまじりあった声で、せいぎくんは嬉しくなりました。

「何でかわからないけれど、おれにも仮面の気配がわかるようになってよかったよ。でも、もうないみたいだ。これでいいかな」

「……にお……」

 

『これは嬉しい時にかぶる、はずかしいのをごまかすための仮面です』とりちゃぽんはお面を持って呟きました。せいぎくんはほっとしました。黄色と茶色の仮面は、何だか今までで一番、りちゃぽんに似合っているような気がしました。

そしてせいぎくんは思い出しました。

 

「りちゃぽん! これで舞踏会に行けるんじゃないか」

「ぽにっ!」

 

『そうでした!』とりちゃぽんは頷きました。

そして正義訓を見上げ、問いかけました。

 

「『俺も一緒に舞踏会に来ないか』って……?」

「ぽにょ!」

「いいのか……?」

「ぽに! ぽにぽにっ!」

 

『是非お越しください、私の恩人』とりちゃぽんは言います。

せいぎくんは笑ってうなずきました。

「うん! じゃあ、一緒に行こう!」

 

 

つづく(次でおしまいです!)