12/24

December 24,2020

だからサンタはいないんだよと。 言えたら楽になったのだろうが。 それを言ってはいけないことくらい、小学生の俺にもわかっていた。 サンタはお父さんなんだよ、サンタは家族の人が演じているものなんだよと、帰りの会が終わった後で、わざわざ女の子に話しかけにいったお調子者の男子がいた。たぶんそいつには悪気はなくて、ただ自分が知ったばかりの「いいこと」をその子にも教えてあげたくて、あとは多分すこし、その子に自分を大人っぽく見せられたらいいとでも思っていたのだろうが、もくろみはあっけなく潰えたようだった。 女の子は泣き出してしまったのだ。 なんでそんなこと言うのと、泣きじゃくるその子に、だっていないんだよ、本当にいないんだよと、情報の信憑性を疑われた科学者のように、そいつは繰り返していた。そういう問題じゃないだろうと、子ども心に自分が思っていたのを覚えている。 ちなみに俺の家には、昔からサンタはいなかっ

「忘れじのK」発売

December 18,2020

2020年12月18日、集英社オレンジ文庫から 「忘れじのK 半吸血鬼(ダンピール)は闇を食む」 が発売されました。 スタイリッシュな挿画は、高嶋上総先生です。 現代のフィレンツェを舞台に、わけありの医学生ガブリエーレ(画像左の黒髪のお兄さん)と、さらにわけありの半吸血鬼の青年(日本人。画像右側の茶髪のお兄さん)が、出会って、一緒に小さな冒険を繰り広げます。 半吸血鬼の青年には隠し事があるのですが、ガブリエーレはどうしてもその秘密の答えを知らなければならない事情を抱えています。 ガブリエーレは答えにたどり着けるのか? 青年は何故隠し事を抱えているのか? 最後に二人はどうなるのか? また不器用な男二人の物語になりました。お好みに合えば幸いです。     2020年は大変な年でした。 宝石商の第二部が完結した後に、長期のおでかけ(取材)を計画していたのですが、サイン会も中止

11/8宝石商アニメイベント

November 9,2020

  中野サンプラザで、アニメ「宝石商リチャード氏の謎鑑定」、プレミアムレセプションパーティこと、DVD・Blurayをご購入いただいたお客さま限定のイベントが開催されました。 午後1ピンクサファイアの部、午後2ホワイトサファイアの部とあり、午後1の部は配信で、午後2の部は現場で拝見させていただきました。 二枚目の画像を見ていただいてもわかると思うのですが、参加時の情報管理はもちろん、マスクの着用、手や足の除菌(マットがありました)、入場から退場までの人数制限など、厳戒態勢で行われたイベントです。理由を説明する必要のない状況が続いていることがつらい一方、こうした取り組みをしてくださるスタッフの方々への感謝の想いもつのります。本当にありがとうございます。 こういうイベント、とても久しぶりでした。 そう感じているのは私だけではないようで、会場近辺でも、そういうお声を聴いたように思います

アニメルポ5 声優さん決定・アフレコ見学

July 30,2020

今までのあらすじ 何もかもが電脳化されたTOKIO世界の片隅で ひたすらKYAKUHON作業に励むジュエラーリチャード関係者一同、 終わりなきシシュポス的作業、むせるようなスチーム、現代科学の限界、 それらすべての不条理をのみこみながら 癒しの副社長のいる朱夏見学を経て、 ANIME GOES ONを実感するTSUJIMURA、 そんな中入り込んできたのは、原作者なら一度はあこがれる 電脳ボイス吹込的作業場ビジティング、 すなわちアフレコ見学の話であった……… 第五話「蒸気戦士ジュエラー、霧かすむアフレコ見学」 次回もTSUJIMURAにつきあってもらう…… (もう何が何やら)   ——-   アフレコ見学のお話をする前に、 メイン声優さんおふたり決定の部分を書き忘れていました。   決定! というお話をいただいたのは、ちょうど朱夏さん

アニメルポ4 脚本づくり

July 27,2020

今までのあらすじ 「楽しんで!」 そんな魔法の言葉に励まされて、おちこんでいたけれど元気をとりもどした辻村! これからもたくさんの困難にきっと襲われるけれど、大丈夫! 愛と勇気を胸に抱いて前をむいて歩いてゆきましょ! しかしそんな中、新たなる困難の波が近づいてきて……!? 次回! 魔法少女まじかるジュエリー第四話 「脚本づくりはタフ!」 おたのしみに! (漫画の裏側にあるアオリふうに頑張ってみたかったのですがうまくいかなかった…) —   ルポ記事、四番目です。 今回は脚本づくりに関する部分のお話です。   小説がアニメになるという実感がようやくわいてきて その現実にどういう風に向き合うかも ある程度はらがきまった頃合いのお話です。   とはいえこれは、ものすごく長丁場のお話であることだけ ご承知おきください。 (1~最終話まで全部一気につくって校

いつかの6月28日

June 28,2020

「では心を込めて。ハァッピ、バァースデーイ」 「うわもうやめて」 「トゥー・ユーウ」 「その余韻もやめて」 「ハァッピー、バースデイ」 「マリリン・モンローの物まねもやめて」 「トゥー・ユー」 「好きじゃない」 「ハァッピバァ――……この渾身のファルセットちゃんと聴いて。バァ――!」 「無駄にうまい」 「アァ――!」 「どこまで伸ばすの」 「アァ――スデ――エィェィエ――」 「本当に無駄にうまいんだから」 「ェエ――イ、ディーア」 「あー、あー、あー! 聞こえない!」 「………………」 「あー!! あー!! わー!! ……終わった?」 「ジェ」 「あーっ! 聞こえない聞こえない! 何も聞こえなーい!」 「じゃあそこは省略して、ハアッピバースデーイ、トゥー・ユー。おめでとう。終わり」 「ありがとう。ひゅう、やっと終わった…………」 「苦行僧みたいな顔するなら歌わせなきゃいいのに」 「そこは褒

宝石商10巻発売

June 19,2020

2020年6月19日 『宝石商リチャード氏の謎鑑定 久遠の琥珀(こはく)』が発売されます。 宝石商シリーズ第10巻、第二部の完結編です。 去年の9巻の発売からやや間があいてしまいました。 待っていてくださった方、ありがとうございます。 9巻と10巻の間には、リチャード氏のアニメ化、コミカライズの開始と、作品にまつわるいろいろなことがありました。 企画の開始は8巻発売の後でしたが、その時から今に至るまで、 びっくりするほど増えた仕事をこなしているうちに、 全てが嵐のように過ぎ去っていった印象です。 ありがたい、本当にありがたい……と、 ふりかえって関係者各位を拝み、アニメを見返したりしつつ、 前を向いて歩いてゆかなければならないこともわかっています。 (とはいえまだアニメ化に関する「原作者に何が起こるかルポ」も終わっていない! すみません。ちょこちょこ書いてまいります) 10巻で宝石商シリー

webサイトをリニューアルしました

March 13,2020

こんにちは、辻村七子です。 このたび辻村小説公園をリニューアルしました。 敏腕デザイナーのnaoさま、本当にありがとうございます。 おかげさまであっちこっち手入れが行き届かなくなっていた庭園が、見事に生まれ変わりました。 wixで作成していたサイトもしばらくはとっておきますが、一年くらい経ったら消えているかもしれません。 リンクをはってくださった方は、お手数ですがこちらの新しいサイトに、はりなおしていただけると助かります。 辻村ともども、新生辻村小説公園、どうぞよろしくお願いいたします。

宝石商アニメ 12/7先行上映会ルポ

December 8,2019

先行上映会ルポ きたる2019年12月7日。 東京都、新小岩駅から徒歩二十分のホールで、催事が行われていました。 「宝石商リチャード氏の謎鑑定 先行上映会 エトランジェへようこそ」 2020年1月9日から、tokyo MX, AT-X, wowowほかで放送・配信される新作アニメが、 どどーんと 1~3話まで見られるという催しです! 申し遅れましたが私は、原作・集英社オレンジ文庫から発行されている 小説「宝石商リチャード氏の謎鑑定」の作者、辻村七子です。 宝石商のお話は、ざっくりいうと 銀座を舞台に、絶世の美貌の持ち主リチャード氏の宝石店「エトランジェ」で アルバイトをつとめる中田正義くんを主人公に 彼らふたりを取り巻く人々や世界の姿を ルビーやオパールなど、さまざまな宝石を通して描いたヒューマンドラマです。 本作はBプロや魔界王子でおなじみ雪広うたこ先生の挿画によって彩られ 2019年1

アニメにまつわる話3

December 8,2019

初顔合わせだよ&雪広先生ありがとう! の巻 <前回までのあらすじ> 関東地方カステリャ市の田舎の城に暮らすしがない作家辻村のところへ、遠く東京都アゴダの城(集英社)からふみが届いた。 『あなたの小説、アニメにします!』 なんという福音! しかし実現するとは思っていなかった矢先、アゴダの都からさらなる文が届く。 『アニメ化が決定した故、アゴダにて顔合わせを行う候』 その時、カスティリャの城に衝撃走るーーーー!! (1~2は大体こんなあらすじでした) 今回のルポは、アニメ化が決定したところからです。 本当にやるんだ……! はいやります、というやり取りの後、 スタッフの方々と辻村と、一度顔合わせをさせていただけるという話があり、 しばらく時間が経ってから 実際に集英社で顔合わせを行うことになりました。 辻村はそれほど会社にお邪魔するするタイプではないので(せいぜい本にサインをいれるときくらいで、